naisentaiken’s diary

エルサルバドル内戦体験記

「刑務官佐伯茂男の苦悩」をやっと読んだ感想

私は日常的に犯罪者の立場にも被害者の立場にもなりうる。しかし、裁く者の立場、刑を執行する者の立場、さらに死刑に立ち会う者の立場になることは、ただの庶民としては皆無だ。この作品は、其の皆無の立場の苦悩を描いた作品として、私にとっては目新しいものだった。

実は私は、加害者の対象になったこともあり、殺意を感じた経験もある。学生時代から平和運動に身を投じていた私は、いつも裁く立場の者に対して批判的だった。

池田小事件の時も、実は加害者の生い立ちやその思いを勝手に想像して、ひそかに分析し、ともすれば同情さえしていた。60の手習いで始めたネットの世界で、私が長い長い自伝を書き始めたのは、実は池田小事件に影響を受けたからだった。其の時も裁く立場の人間の苦悩を考えもしなかった。

人の死に直接かかわるのだから、そりゃ苦悩があるのは当然だろう。

この作品は、犯罪者の内面の追及は足りないような気もするが、裁く立場、死刑に立ち会う側の刑務官の心の動きを記したものとして画期的なものだと思う。一般の人が立ち入れない側の心理を表現してあまりある作品だと思う。限りある人間が限りある人間をさばき刑を課し死に至らしめるのだから、苦悩があって当然だろう。其の事を人間として描いた、考えさせられる作品だった。